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こばやし

ジャック・リヴェット『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

2017年3月31日 第3回目の「なんか映画について書いてみる会」を行いました!

課題作品はジャック・リヴェット『セリーヌとジュリーは舟でゆく』

ここに"なんか映画について書いてみた文章"を掲載します。 こんな"書いてみた"文章たちが集まりました!

 

ひとの落としたものを拾うことと、それを自分のものにすることは事実上区別されえない(じっさい、電車内などの衆人環視の場で、落としものを拾う・手に持つことは、それを盗んだのだと受け取られかねない)。セリーヌが身につけていたものがつぎつぎと滑り落ちる。落としたことを知らせるために落下物を拾い上げ後をついていくジュリーは、セリーヌの落としものを拾い・手に持つにつれてだんだんとセリーヌに近づく・似ていく。セリーヌもまたそのぶんだけジュリーに近似する。跡をつけるものとつけられるものが漸近するとき、「セリーヌとジュリー」という共同体が生まれる。そこではもはやだれに何が起こったのかを決定することはできない。「etと」という接続詞が指示する領域とは、出来事と出来事が生起する場それ自体のことだ。共同体はひとつの場をかならず持つ(アパルトマン、舟、夢…)。そして「と」が関係の外在性の指標であるかぎり、つかのま夢見られた共同体は終わりを迎えるだろう。しかし関係それ自体、あるいは場それ自体は残りつづけるだろう。それは、セリーヌがジュリーの跡をつける番になったとしても、ふたたび共同体を作り上げるための雛形となるはずだ。

三上耕作

 

映画を見ていくと、セリーヌとジュリーの一見正反対に見える存在の境界が曖昧になる。

最初こそ髪や服の色の違い、追う追われるの関係等、正反対に現れる二人は、次第にお互いの役割を交換することで、二人の存在が重なってくる。グレゴワールの待ち合わせにジュリーと偽ってセリーヌが向かい、セリーヌのショーの代わりにジュリーが立つ。この二人の境界を曖昧にして現れる最たるものは、ボンボンを同時に舐めた二人が同じアンジェラという人物を交互に演じるシーンだ。アクションつなぎで編集される階段のシークエンスは、どちらが今アンジェラを演じているのかを見落としてしまうだろう。

相対するものが重なっていくこと、その過程は観る者も体験していくこととなる。

インタータイトルや、前触れもなく挿入される館のカット等で私たちは度々自分自身がセリーヌでもジュリーでもなく映画を観ている私なのだと気付かされる。しかしそんな中で、部屋のカーテンを閉めた暗闇の中、一点にカメラを見つめて館で起こる劇を鑑賞する二人の姿は、丁度スクリーンを境界にしてこの画面を見つめている私達の姿とそっくり重なってくる事に気付く。

セリーヌとジュリーがこの館で繰り広げられる物語に能動的に介入し、夢の鑑賞者から抜け出そうとすること、その姿はヌーヴェルヴァーグの一員として活躍した人々が映画を観る姿そのものだ。

たかはし

 

普遍的世界の魔術 私はよく“ながら見”をする。 ただこの作品でそれは許されない。 同時に近年そういった経験を久しくしていなかったという 懐かしいような新鮮な気持ちにさせてくれた。 猫や魔術書、不思議な飴などがキーになっているが、これがもし日本のアニメだとしたら 間違いなくピンクの少女が主人公だろうに この作品ではそれを全く感じさせない。 ただこちらはフランスではあるのにシャンゼリゼ通りのようなギラギラも感じない。 強いて言うならばルーブル美術館の絵画のような普遍的な美しさは持ち合わせていると思う。 ありがち言葉で魔法にかけられたような気分になるというのは 煌びやかではっきり目に見える様なものではなく 知らず知らずのうちに気づいたら知らない道に入り込んで迷子になっていたような そういう状態ではないだろうか。 そしてその迷い込んだ先には新しい世界が待っている。そしてその世界は私は好きだと言える。 そんなビジョンを示してくれた。

森田

 

懐かしい2人

女の子が2人、遊んでいる。「ごっご遊び」に興じながら、少しずついらないもの、恋人や職場を排除しながら、2人だけの世界を作り込んでいく。寄り添い笑い合いながら、2人だけのルール、遊び、合言葉、秘密ができていく。

忘れていた日々のことを思い出す。日暮れまで友達と2人だけのルール、遊び、合言葉、秘密を作り、時間を忘れて遊んだ日のことを。私たちが2人だけの世界から現実へ戻る合図は、夕方流れる音楽だった。夏は18時、冬は17時に流れる『夕焼け小焼け』古いスピーカーから、少し調子外れの音楽が、夕方になるとそこら中から流れ出してきた。音楽を聞くと私たちは「家に帰らなければ」と言い合い、それぞれの家へと帰った。

ジュリーとセリーヌは、そのときの私たちのようだ。とても懐かしく、そして羨ましい存在だ。

小林和貴

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