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こばやし

好きな漫画家上位だが、なかなか言いづらい好きな漫画家上位でもある人の話

浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を再度読んだ。正確には2巻分くらいしか読んでいなかったので、最新刊まで一気に読んだのだ。TSUTAYAの漫画レンタル万歳。

浅野いにおは一般的に「サブカルw」的な扱いを受けることの多い作家で、浅野いにおが好きだと明言すれば、十中八九「ヴィレヴァン好き?」と聞かれるのが現状だ。私個人としては、ヴィレヴァンで浅野いにおが大きく取り上げられる前から、浅野いにおの漫画読者だし、そもそもヴィレヴァンがメジャーになる前から行ってたし、何が言いたいかと言えば、私が好きなものを「サブカルw」と安易な言葉でまとめないで欲しいと言うことだ。同じような人は、全国にたくさんいるはずだ。

そんなこんなで、浅野いにお漫画からはしばらく遠ざかっていたのだが、彼の再婚(しかも鳥飼茜が相手なので超テンションあがる)したのを気に、デデデ(『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の略。以下注釈なしで使用)はどうなったのかな?と思い、TSUTAYAで既刊を全て借りてきた。

基本的にデデデは、3.11後の日本を宇宙人襲来後の日本と変換し(作中では8.31と言っている)、描いたものだ。ハイテンションでブラックなギャグが頻繁し、前作の長編連載作品『おやすみプンプン』よりは、ライトで読みやすい内容になっている。しかし、連載が進むにつれ、人間の愚かさや醜さが日常レベルで描かれているので、読んでいると自分自身の「常識」がゆらいでくる。

右翼も左翼も、というか現在の日本にはびこっているネトウヨやパヨクをはじめ、全方向をおちょくって皮肉っているため、読む人が読めば、本当に腹立たしい内容だろう。実際私も「学生任意団体」の描き方には、ちょっとおい!となったが、痛いところをついているので、そうだよなーと思わずにはいられない部分も多々あった。

全体的には、ネットではびこっている噂話やデモを意識的に拡張して描いており、私たちが現在生きている日本の「最悪の事態」を想定して描いているのだと思う。だが残念なことに、漫画の中の日本と現在の日本はかなり近い。描いている彼自身が、現在の日本をどん底まで憂いているのだろうと、安易に想像できる。

ただ、ここまで書いた内容だと、本当にどうしようもない登場人物たちしか出てこず、誰にも感情移入ができない漫画のように思えるが、困ったことに出てくる登場人物のほとんどが「自分の日常」を守るため、維持することを前提に行動しており、現在の日本を生きる私たちと何ら変わりがないのだ。感情移入し放題だ。

日々のくだらない日常の永遠さを盲信しようとする人、友人の味方であり続けようとする人、何か信じようとするものを作ろうとする人、目に見える範囲の人を守ろうとする人、狂っていることを認識しつつも業務を全うする人、全ての登場人物が「日常」を守ろうとするため、左右様々な思考にばらけているだけなのだ。それに意識的な人もいれば、無意識的な人もいる。それは私たちと同じではないだろうか。

だから読者である私は、登場人物の誰も責めることができない。感情移入の度合い違えど、誰も彼も、同情してしまうのだ。みんな辛いよねと、陳腐な言葉で全てを巻き込んでしまいそうになるのだ。

3,11後、日本は集団パニックに陥ったままだ。震災に関係すること(そもそも3.11後は、震災が頻発し、あらゆるところが被災地になってしまったが)、そうでないこと、さまざまなことにヒステリックに論じ続けている。

それらにどれだけ意味があったのだろうか。そう論じてきたことによって、救われた人々はいったどれだけいたのだろうか。ヒステリックな論争をするのもの一個人だが、誰かを救い続けているのも一個人という現状を、私たちは受け止め切れているのだろうか。

浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、そういった私たちの日々を肯定しつつ、何も意味がなかったのだと、全力で殴ってくる。早く集団パニックから抜け出さなければならないのだ。しかしまだ、出口は遠い。

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