たかはし
根拠のない噂話
噂話は根拠がない方がいい。あったとしても疑わしい方がいい。「おれのにいちゃんの友達の久保くんが見たんだって」くらいの。
噂されている人も、噂が本当なのかどうか、はぐらかしていた方が良い。「ご想像におまかせします」なんて言ってさ。
そこから噂好き達の想像ゲームが始まる。これが噂話の一番の醍醐味だ。
「映画は、たとえどんなに荒唐無稽な世界であっても、それを『信じる』ように仕向けられる。その世界に綻びがないよう細心の注意が払われる。」ー諏訪敦彦
映画みたいな信じられない噂話にも、これが本当だとしたらどういうことなのだろう?とつじつまを合わせる作業が始まる。
この前急に不機嫌になった
そういえば最近ボクササイズを始めたらしい
知らない女と歩いているのを見た
あることないこと詰め込んで、あったかなかったかわからない出来事に真実味を付与していく。
その噂や裏付ける根拠が本当なのかどうかなんて、もうこの際どうだっていい。大切なのはその真実味が美味しいかどうかだ。
ただ、ここまで噂が広がると、大馬鹿野郎が真相を探り出す。わかってないぜ。不確定さがこのゲームのおもしろさを担保しているってのに。
そうして周囲に知れ渡る真実とやらほど、不味いものはない。うんざりするほど味わっているんだから。