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西河克己「ザ・スパイダースのバリ島珍道中」

  • たかはし
  • 2017年8月1日
  • 読了時間: 2分

2017年7月28日 第7回目の「なんか映画について書いてみる会」を行いました!

課題作品は西河克己「ザ・スパイダースのバリ島珍道中」です。

ここに"なんか映画について書いてみた文章"を掲載します。 こんな"書いてみた"文章たちが集まりました!

 

「なんとなく なんとなく」

どうやってプルトニウムをアンプの中に入れたのか?

どうして警察に通報しないのか?

なぜ殺されかかっているのに演奏を続けるのか?

そんな野暮な質問してくれるな。「だってそうしないとザ・スパイダースが見られなくなっちゃうじゃないか!」それがせいぜい見つかる答えで、他にはありはしない。飛んだり跳ねたりするスパイダースこそ、この映画が何よりも見せたいものだ。

だからこの映画はどこまでも空虚だ。惚れた腫れたの物語が感傷的ではないのは、登場人物の誰しもがこれが永遠の愛なんてものじゃなく、せいぜい一夏やそこらの色恋沙汰程度なものだろうということをわかっているからだ。婚約破棄なんて大した問題ではない、もっと大切なのはいかにして美人の心を束の間捕らえることができるのか。それがなんとなく、なんとなく、なんとなく幸せになれたらハッピーだ。

そういうもんだから。

映画に何かそれ以外のことが語れただろうか?

たかはしそうた

 

 

堺正章が演じているのは三枚目の役回りだが、キレ味が鋭すぎて芸を極める者の凄みが全面に現れちゃってて可笑しくないどころか怖い。たぶん回りのことなど一切顧ずに芸道に邁進する人だ。回りは大変だろう。

井上順のクールで優雅な佇まい。しかし目の奥に宿る底のない暗さが怖い。彼には虚無を感じる。芸能界という生き馬の目を抜く世界で生き残っていくためにナイーブな心を凍結したかのような印象。でも美しい。

後に田辺エージェンシー社長として芸能界を牛耳ることとなる田辺昭知。

芸能界という魔境をコントロールしてしまうような魔人。この世ならざる者。

こんな人たちが本人役を演ずる世界においては、殺し屋に扮する内田良平も高品格も骨抜きにされてしまう。

バリ島にプルトニウムを置き去りにするという度し難い暴挙も彼らにとってはガムランを演奏するのと同じレベルで遂行されるのだ。能天気なドタバタコメディーのフリした空恐ろしい世界がここにある。

山内敬( trancinema )

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