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2人だけの噂話

  • こばやし
  • 2017年8月14日
  • 読了時間: 2分

目が覚めると、天井がぼんやりと光っていた。奥にある洗面所から漏れる光が、ベッドの横にある鏡に反射して、天井を柔らかく照らしているのだ。天井をぼんやりと照らす光は部屋中に散らばっていて、部屋全体を薄明るくしていたけど、部屋にある全てのものの輪郭を奪っている、と言ったほうがしっくりした。ベッドも冷蔵庫もテーブルも椅子もテレビも、私さえも、薄明るい部屋の中では輪郭がはっきりせず、どこからどこまでがベッドなのか冷蔵庫なのかテーブルなのか椅子なのかテレビなのか、私なのか、わからなくなっていたからだ。

窓の外からは、誰かの歌声と低く怒鳴る声がし、隣の部屋からは高いうめき声がする。耳を塞ぐほどうるさくはないが、ゆっくりと目をつぶれるほど静かでもなく、体をもぞもぞと動かしても、どうにもこうにも落ち着かない。

さらに横では、ぐっすりと目をつぶった横顔から、リズムをとる寝息が規則正く聞こえ、鼻の中をかすめるような鼻濁音が不規則に聞こえてきていた。

鼻をつまんで、せめて鼻濁音を消したかったけど、私から触って良いものなのか、躊躇してしまう。私には、不確定なものに触れる勇気はない。

せめともと思い右に寝返り、ぐっすりと目をつぶった横顔を見つめる。横顔を見つめながら、明け方の憂鬱を思い浮かべてしまったが、今それを思っても辛いだけ。ぎゅっと目をつぶり、窓の外から聞こえる歌声に耳をよせる。

調子外れの蛍の光。居酒屋の閉店間際によく聞く歌だが、窓の外の彼はいったい何を閉めようとしているのだろうか。

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